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精神科医が解説。脳の「独り言」を止める、音楽でストレス解消する仕組み

なんとなく気分が上がらない。忙しいのに、休日も疲れが抜けない……。そんな「なんとなくしんどい」を感じている人は多いのではないでしょうか。

そんな人にぜひ試してほしいのが、じつはとてもシンプルな方法です。

「仕事や学校の帰り道、イヤホンをつけて好きな音楽を聴いてみてください」そう話すのは、心療内科HIKARI CLINICの院長・遠迫憲英先生。精神科医として日々多くの患者と向き合いながら、自身も長年ダンスミュージックに親しんできた遠迫先生に、音楽が心に与える影響について聞きました。

【プロフィール】
遠迫憲英(えんさこ・のりひで)
精神保健指定医・日本精神神経学会認定専門医。心療内科HIKARI CLINIC院長。岡山県出身。大学時代から音楽活動・格闘技(空手・日本拳法二段)・バックパッカーとして各地を放浪。幼少期から人間の意識への興味が深く、精神科医として現在に至る。自身もDJとしてイベントを主催するなど、ダンスミュージックと心の関係を実践的に探求し続けている。
https://hikariclinic.jp

音楽が「気分のスイッチ」になる理由

日々のストレスを解消する方法はさまざまありますが、音楽はその中でも特別な存在だと遠迫先生は言います。

「音楽を聴くことで、人の意識状態は変わります。穏やかな音楽が流れるだけで自然とリラックスできたり、テンポの速い曲を聴いたら気持ちが前向きになったり。これは多くの人が日常的に経験していることだと思います」

じつは私たちは無意識のうちに、そのときの気分や目的に合わせて音楽を選んでいる。失恋して悲しいときは悲しい曲を、朝なかなか家を出られないときはテンポの速い曲を。それ自体がすでに、音楽を使ったセルフケアだと先生は言います。

5分聴くだけで脳がリセットされる

では、具体的にどう音楽を使えばいいのでしょうか。遠迫先生がすすめるのは、仕事や学校の帰り道にイヤホンをつけて音楽を聴くことです。

「特にダンスミュージックは、1分間に120〜130拍のテンポで作られています。これはちょうど人が少し活動的になったときの心拍数に近い。だから聴くだけで自然と気持ちが前向きになる。難しいことは何もなくて、帰り道の5分でいいんです」

音楽によって脳はチューニングされる、と先生は表現します。活動的になりたいときはテンポの速い曲、落ち着きたいときは穏やかな曲。自分の「今の気分」と「なりたい気分」に合わせて選ぶだけで、その効果は変わってくるといいます。

脳の「独り言」を止める、ダンスミュージックの力

音楽の中でも、なぜダンスミュージックが特に効果的なのでしょうか。その理由を先生は脳科学の観点から説明してくれました。

「脳には『デフォルトモードネットワーク(DMN)』と呼ばれる仕組みがあります。人が何もしていないとき、例えば電車でぼんやりしているときや夜眠れないときに活発になる、いわば脳の『独り言』装置です。『あのときこうすれば良かった』『明日どうしよう』といったネガティブな思考がぐるぐると止まらなくなるのは、このDMNが過剰に働いているから」

現代人はSNSや仕事のストレスによって、このDMNが常にフル稼働している状態にあると先生は言います。

「そこにダンスミュージックの規則的なビートが入ってくると、脳はそのリズムに同期しようとします。外側から強制的にBPMが入ることで脳波自体が同期して、あの止まらない独り言が静まっていく。これがダンスミュージックが特に効く理由です」

ロックやJ-POPではなくダンスミュージックである必要はあるのでしょうか。

「歌詞のある音楽は、言葉の意味を処理するぶん、脳が別の作業をしてしまう。ダンスミュージックは歌詞に依存せず、一定のビートがひたすら続く。その催眠的な反復が、脳を没入状態へと連れて行くんです」

精神科医が患者に音楽をすすめるわけ

こうした音楽の効果は、遠迫先生の診療の中でも活きています。

「ストレスや気分の落ち込みを抱えた患者さんに、音楽を日常に取り入れることを勧めることがあります。特別なことは何もなくて、帰り道に好きな音楽を聴く、それだけでいい。薬や治療の前に、まず自分でできるセルフケアとして、音楽はとても有効な選択肢だと思っています」

自分を責めたり、考えすぎてしまう人ほど、音楽で脳をいったんリセットする時間が大切だと先生は言います。「頭が騒がしいと感じたときこそ、イヤホンをつけてみてください」

もっと解放されたいなら、フェスへ

日常で音楽を聴くことがセルフケアになる。では、もっと深く解放されたいときは?

「家でダンスミュージックを聴くことも良いですが、さらに深く解放されたいなら、フェスという選択肢があります。フェスで一度すごい体験をすると、家で同じ音楽を聴いたときにその体験を追いかけられる。だからまず、フェスに行ってみてほしいんです」

昨年10周年を迎えたダンスミュージックフェスティバル「ULTRA JAPAN 2025」

数百人、数千人が同じビートに身を委ねる空間では、脳の同期がより強く、より深く起こります。周りを見れば、みんなが同じように音楽に乗っていて、その一体感の中で、日常では味わえない解放感が生まれる。それがフェスという場の力です。

「まずは音楽を聴くことから始めて、もっと解放されたいと思ったらフェスへ。その体験が、きっとあなたの日常を変えてくれると思います」

非日常を感じられる圧巻のメインステージ

聴くだけで気分が楽になる、音楽という身近な存在がもつパワーは計り知れません。今日少し疲れたな、リラックスしたい、やる気を出したい……そんなときは、今日の帰り道にイヤホンをつけてみてください。

ダンスミュージックとフェスが心に与える影響についてさらに深く知りたい方は、遠迫先生の前回インタビューもあわせてご覧ください。

「フェスで心が軽くなる」? 精神科医・遠迫憲英が語る、ダンスミュージックの意外な効能

ULTRA JAPAN MAGAZINE編集部

ULTRA JAPAN MAGAZINE編集部

日本最大級の都市型ダンスミュージックフェス「ULTRA JAPAN」の特別マガジン編集部。株式会社ライブドアが運営し、フェスの楽しみ方・アーティスト情報・EDM/ダンスミュージックの最新トレンドを、現場取材などをもとに発信しています。

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